桜はまだかいな

3月下旬というのに今日もとても寒かった。
今週雪マークの天気予報、どうなってんの、桜はまだかいな。
この季節、春が待ち遠しい歌、「春はうれしや」「梅は咲いたか」などなど春の江戸端唄は多い。

妻R子は江戸端唄を10年近くお稽古していた。毎晩、毎晩疲れた私の横で三味線をたたいていた。
習いたての素人の三味線は、あれは殺人行為である。「ヘタクソー、お願いだからやめてくれ、金払うから、プリーズ!」「あなたのせいで上達しないのよ」と文句を言われるが。
仕方なく、忍び駒で、三味線を弾く。それでもうるさい。
2、3年経つうちに私は文句を言わなくなった。つまり、上達したのである。
私が晩酌する横で、チントンシャン、チントンシャン。まんざら悪くない。東のお茶屋さん(一見さんお断りの世界)に行けば数万円。
ついついお酒が進む。でも三味線の皮が破けりゃ、酔いがさめる。
毎晩R子が同じ歌を練習するものだから、私まで覚えてしまった。環境とはすごいものである。
自然に耳に入ってきて、数曲歌えるようになった。

「桑名の殿様」「深川」「奈良丸くずし」「春はうれしや」「春雨」「梅はさいたか」「祇園小唄」「奴さん」
「から傘」「かっぽれ」「猫じゃ猫じゃ」「十日町小唄」「ちゃきり節」「なすかぼ」などなど、全部歌える。

東、西、主計町の芸妓さんの顔と名前はだいたいわかる。自分でもすごいと思う。
ただで見られるようなも会に顔をだし、日夜勉強(笑)し自然と覚えていった。好きこそもの上手なれ。
だがお座敷で酒飲んで芸妓の遊びをするような身分ではない。一度も大枚はたいたことはない。
そうそう、若いころにアルバイトした飲食店で、芸妓連中と遭遇したことがきっかけかな。
真っ赤な顔をして、注文されたお酒を芸妓さんに手渡しした。そのお礼に、私の目をじっくり見て、
「あんやと」と言ってくれた。正調の金沢弁を聞いた。何か懐かしい、響きがあった。この人たちは何者?
その一件が私のハートに火を点けたのかもしれない。京都と違うぼっこい、優しい品というか。

でも一度はお座敷で生の踊りを見てみたい。いつのことやら。