農家の最期

私の温室の、右隣のそれは、4世代が同居する、大農家の持ち物。左隣のそれは、花農家さんが営んでいた。
奥さんを先に亡くされ、後継者もいない。しばらく、廃墟と化して、荒れ放題になっていたが、昨冬より、
企業の制服を着た社員らしき輩が、ボウボウ伸びた雑草、灌木やゴミをかたつけていた。
大型機械を積んだ大型のトラックが何度も、私の温室の前を行き来する。今度は何?

今日も風の大荒れの日、花農家さんが丹精込めて育てた、何本もの椿がチェーンソーで切られていた。

確か奥にもキーウィ、ミカン、大きなユーカリユキヤナギ、珍しい茶花があったはず。
あれもなくなったのかと思うと、私のものではないのだが悲しい限りである。
この残虐な光景をSさんは、凝視できるだろうか、いや絶対にできない。

ウィーンウィーンと、悲鳴にも似た椿の呻き声を聞くと、同じ農家として聞くに堪えない。退散した。

農家の最期をもう二度と目にしたくない。




やっと体も冬眠からさめ、キンニクが活動してきた。農家は体が資本。
今日のお昼久しぶりにステーキを食べた。