霜里農場見学記 その6

先月、比企のスローライフ探訪のワークショップに参加して、手打ちうどんを作った。
その時同じグループの中に、宮崎あおい似の、素敵なお嬢さんがいた。
彼女が発した言葉にびっくりした、「5年後に有機農業をやる。」
その風貌と、思いもよらぬ言葉のギャップにドギー&マギーした。
翌日の霜里農場では、金子さんの発した言葉、すべてを書き留めていた。
なんと、林さんのお父さんは、金子さんの最初の研修生。いまや有機農業のパイオニア的存在。
この父に、この娘あり。納得した。
あのキラキラ輝いた目は、5年後の有機農業の未来を見据えていた。

若い二人の今後の活躍に、エールを送りたい。<<野菜の生産者>
林農園 林 重孝さん (千葉県 佐倉市)53歳
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(農地面積)畑 150a ハウス 1a 果樹 30a 合計1.6ha
(生産物)畑;旬の野菜、年間約80品目、大豆、キウイフルーツ、鳥、卵、にんじんジュース、きな粉など

プロフィール 1977年大学の農学部を卒業後、両親の農業の手伝いに入る。家は代々の農家。3年目、農薬を使う農業に疑問を持ち、埼玉の有機農家で1年間の研修を受ける。実家に戻り有機農業を始める。当時、両親は近所の農家から有機農業について批判も受けたが、林さんは必ずできるという信念で辛抱した。始めて4,5年もすると収穫量も増えてきて、軌道に乗り始めた84年、有機農業の関係で現在のパートナーと知り合い、結婚。同じ志を持つ心強いパートナーを得て、経営も安定し、始めは批判的だった周囲の農家にも林さんの栽培方法を参考にする人が出てきている。
とれた野菜は、60件ほどの消費者に配達している。野菜を消費者の玄関先に置く時、農薬も化学肥料も使わないで、丹精込めて作った野菜なので、どうかうまく調理してくださいという気持ちを込めて、思わず、「お願いします!」と言ってしまう。消費者はこの野菜で自分は生かされているという意味で、「ありがとうございます」と言ってくれる、という消費者と顔の見える関係を大切にしている。

<どんな農業をめざしているのか?>
人と環境に優しい食と農を求めて、安全な農産物の生産と有機農業の実践をしている。また、循環する農業を実践している。家で飲むお茶は、畑の脇にお茶の木を植えて、摘んで飲んでいる。醤油や味噌も自家製の大豆で作っている。屋根には54枚のソーラーパネルが取り付けられていて、夜と冬のみ電力会社から電気を買う。天気の良い日は、自家発電でまかなわれる。庭には、ゆずやブルーベリー、栗やキーウィなども植えられていて、自給自足を目指している。

<林さんにとって、農業のすばらしさとは?>
人間らしく生きれるということ。適度に体を動かし、安全でおいしい食べ物を食べ、すばらしい自然環境の中で生活できる。周りに森林があれば、森林浴をしていることになる。また、子供と一緒に食事が取れるのも農業のよさ。農業はよく3K産業と言われるが、発想を逆転すれば、これほどすばらしい仕事はないと思う。

<今後の課題や夢は?>
常時住み込みや通いの農業研修生を受け入れている。林さん自身が研修でお世話になった感謝も含めて、少しでも有機農業者が増えればと思っている。また、2ヘクタールほどの山林があるが、長男が後を継いでくれたら、子孫のために植林、下草刈り、枝打ちなどの山仕事をして木を育てたいと思っている。それは同時に地域に、日本に、山林を残す仕事となるから。これからも、有機農業を実践することによって、農村本来の環境を取り戻し、地域や消費者に共感が得られる農業や暮らしを求めていきたい。